LOIやMOUに違反したらどうなる?

この記事のテーマ

契約交渉中、LOIやMOUを作ることを交渉相手から求められることがあります。

本記事では、企業法務弁護士が、以下の疑問に答えていきます。

・LOI(レター・オブ・インテント、Letter of Intent)にサインを求められたので、とりあえず知識がほしい!

・LOIとMOU(メモランダム・オブ・アンダスタンディング、Memorandum of Understanding)は、何が違うの?

・LOIやMOUには法的拘束力があるのか?

・LOIやMOUに違反したらどうなるの?

この記事の信頼性

・筆者は企業法務がメインの弁護士。法務博士(専門職)。

・契約書実務の実績が約15年。(英文契約書を含む)

・この記事のために専門書籍も確認してます。

LOI(レター・オブ・インテント)とは

LOIは、将来、交渉の相手と取引をする意向があることを相手に示すための文書です。

「取引の意向」にもいろいろなレベルがあると思いますが、LOIは、単なる興味がある程度では、作成されません。

かなり真剣なレベルで作成されるものだと思ってください。

正式な契約書の作成に先立ち、途中経過としてLOIを作成し、これまで合意されている契約の基本的な条件面を取りまとめます。

これによって、正式な契約書の締結に向けた、今後の方向性を明確にしていきます。

LOIで確認された概要をもとに、詳細な契約書の作成が進められていきます。

このように、LOIは、正式契約に向けて条件を整理するための「中間地点」の役割を持っています。

MOU(メモランダム・オブ・アンダスタンディング)や覚書との違い

よく似た書類で「MOU」や「覚書」がありますが、LOIとどう違うのでしょうか。

LOIやMOUは、必ずこういった形式でなければならない、という決まりごとはありません。

しかし、文章の形式が少し違います。一般論として、以下のような傾向があります。

LOI一方の当事者が相手方への「手紙」のような形式で送り、相手方がそれを承認したらサインを返す。
MOU・覚書最初から合意書のような形で、両当事者のサイン欄がある。

LOIに法的拘束力はあるのか

LOIには、基本的には法的拘束力はありません。

例えばM&A契約の交渉段階でLOIを作成したとしても、最終的にM&Aの正式契約を結ぶ義務までは発生しません。その意味で、法的拘束力はありません。

しかし、部分的に法的拘束力が認められることもありますので注意が必要です。以下のような場合には、LOIに法的拘束力が発生する可能性があります。

「法的拘束力あり」と合意していた場合法的拘束力を持たせることが当事者双方の意思であれば、それが尊重されます。
秘密保持条項交渉に関する情報は秘密にしましょう、と合意していた場合。
これに違反し、第三者に情報を開示すると、秘密保持義務の違反になります。
独占交渉権に関する条項独占交渉期間中は、第三者と交渉をしてはならない、と合意することがあります。
独占交渉義務に違反して第三者と交渉することはできません。
情報開示義務・説明義務に関する条項正式契約に向けて必要な情報を開示する、と合意することがあります。
約束した以上は、相手方に情報を開示し、求められた説明をする必要があります。
交渉義務に関する条項LOI締結後、正式契約に向けての交渉をシャットアウトできない場合があります。
LOIに法的拘束力が発生する可能性がある場合

LOIに違反するとどうなるか

LOIの約束に違反した場合、どうなるのでしょうか。

上記のようにLOIには基本的に法的拘束力はありません。よって、正式契約を結ばないことも、原則、自由です。

しかし、以下のとおり、損害賠償責任を問われる場合があります。

  • 法的拘束力がある条項に違反した場合:秘密保持義務や独占交渉義務など、法的拘束力のある条項に違反した場合、契約違反を理由に損害賠償義務が発生する可能性があります。
  • 契約締結上の過失責任:LOIやMOUを締結し、正式契約が結ばれるということを相手方に強く信頼させ、相手方が準備行為を進めていったのに、相手方の信頼を一方的に裏切って正式契約を締結しなかった場合、信義則上、損害賠償責任が発生する場合があります。

お問い合わせください

以下のようなご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。

・LOIをチェックしてほしい

・LOIを作成したい

・LOIを結んでいた相手に逃げられた

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