表明保証(Representation & Warranty)と誓約条項(Covenant)の違いとは|英文契約の実務ポイント
この記事はこんな方に向けて書いています
- 海外企業との契約書レビューを担当している方
- 英文契約の意味は理解できるが、条項ごとの役割の違いに不安がある方
- 投資契約・M&A契約に関わる方
- 表明保証と誓約条項の違いを実務レベルで理解したい方
- 自社にとって有利か不利かを判断したい方
結論|表明保証は「過去・現在」、誓約条項は「将来」を規律する
英文契約における表明保証(Representation & Warranty)と誓約条項(Covenant)は、いずれも当事者の義務や責任に関わる重要な条項ですが、その役割は大きく異なります。
表明保証は、契約締結時点における事実の正確性を担保するものです。例えば、「財務情報は正確である」「未払債務は存在しない」といった内容がこれにあたります。
これに対し、誓約条項は、契約締結後に当事者がどのように行動すべきかを定めるものです。例えば、「一定期間競業しない」「必要な情報を継続的に提供する」といった義務が典型例です。
このように、表明保証は「過去・現在」、誓約条項は「将来」を対象とする点で、本質的に異なります。
表明保証と誓約条項の違い(一覧)
| 項目 | 表明保証(Representation & Warranty) | 誓約条項(Covenant) |
|---|---|---|
| 対象 | 過去・現在の事実 | 将来の行為 |
| 内容 | 事実が真実であることの表明・保証 | 一定の行為をする/しない約束 |
| 典型例 | 財務情報は正確である/未払債務はない | 競業しない/情報を提供する |
| リスクの発生時点 | 契約締結時点ですでに存在 | 契約締結後に発生 |
| 違反(breach)の意味 | 前提事実が誤っていた状態 | 義務に違反した状態 |
| 主な法的効果 | 解除・損害賠償請求 | 差止・履行請求・損害賠償請求 |
| デューデリジェンスとの関係 | 調査で把握しきれないリスクを補完 | 契約後の行動をコントロール |
| 実務上の注意点 | 範囲を広げすぎない(限定が重要) | 履行可能性を確保する |
| 交渉ポイント | knowledge / materiality で限定 | 義務の範囲・期間を調整 |
まず用語の整理|Representation / Warranty / Covenantとは
Representationとは何か
Representationとは、契約締結の前提となる事実についての表明を意味します。相手方は、この表明が真実であることを前提として契約に入ります。
Warrantyとは何か
Warrantyは、表明された事実の真実性を保証する機能を持ちます。表明が不正確であった場合に、一定の法的責任(損害賠償など)につながる点で重要です。
Covenantとは何か
Covenantは、契約締結後における行為を拘束する約束です。当事者に対して、一定の行為をする義務またはしない義務を課します。
【重要】実務上の違い|同じ「約束」でも役割は異なる
① リスクの発生タイミングの違い
表明保証に関するリスクは、契約締結時点で既に存在しています。例えば、実際には債務が存在するにもかかわらず「債務はない」と表明していた場合、契約締結時点でリスクは顕在化しています。
これに対し、誓約条項に関するリスクは、契約締結後に発生します。例えば、契約後に競業避止義務に違反した場合に初めて問題となります。
② breach(違反)時の効果の違い
表明保証に違反があった場合、契約の前提が崩れることになります。そのため、契約解除や損害賠償請求の根拠となることが一般的です。
一方、誓約条項の違反については、その内容に応じて救済手段が異なります。
- 不作為義務(〜してはならない)違反
差止請求(injunction)の対象となるのが典型です。例えば、競業避止義務に違反した場合がこれにあたります。 - 作為義務(〜しなければならない)違反
履行請求(specific performance)が問題となり得ます。例えば、情報提供義務や報告義務に違反した場合がこれにあたります。
加えて、いずれの場合も損害が発生していれば、損害賠償請求の対象となります。
もっとも、実務上は履行の強制が困難な場合も多く、損害賠償や違約金による対応が中心となることも少なくありません。
③ デューデリジェンスとの関係
表明保証は、契約締結前のデューデリジェンス(調査)と密接に関連しますが、その役割は単なる確認対象にとどまりません。
実務上、デューデリジェンスによってすべての事実関係を完全に把握することは困難です。そのため、調査では把握しきれない事項について、相手方に表明保証をさせることでリスクを補完・移転する機能を持ちます。
この意味で、表明保証は「調査の結果を裏付けるもの」であると同時に、「調査の限界を補うもの」として設計されます。
一方、誓約条項は契約締結後の行動をコントロールするためのものであり、デューデリジェンスとは異なる局面で機能します。
よくある誤解|「同じような条項」と考えるのは危険
「representationとwarrantyは同じ」という理解の限界
実務上、representationとwarrantyはまとめて用いられることが多いものの、法域によってはその法的効果に違いが認められる場合があります。単純に同義と理解するのは不十分です。
「とりあえず入れておく」はリスクになる
表明保証の範囲を広く取りすぎると、後に違反と評価されるリスクが高まります。また、誓約条項についても、履行が現実的でない義務を設定すると、将来的な紛争の原因となります。
具体例|スタートアップ投資・M&Aでの典型例
表明保証の例
スタートアップ投資契約では、「財務諸表は正確である」「重要な契約違反は存在しない」「法令遵守に問題はない」といった表明保証が求められることが一般的です。
covenantの例
同じ契約において、「一定期間競業を行わない」「投資家に対して定期的に財務情報を提供する」といった誓約条項が設定されることがあります。
実務対応|どのように設計・交渉すべきか
表明保証は限定・精査する
表明保証については、knowledge qualifier(知っている限り)やmateriality(重要性)といった限定を付けることで、過度な責任を回避することが重要です。
covenantは履行可能性を基準に設計する
誓約条項は、実際に履行可能な内容にすることが不可欠です。過度に厳しい義務を設定すると、違反リスクが高まります。
条項全体のバランスを取る
表明保証や誓約条項は、責任制限条項やindemnity条項と組み合わせて設計されます。個別条項だけでなく、契約全体としてのバランスを検討する必要があります。
まとめ|用語ではなく「機能」で理解する
表明保証と誓約条項は、いずれも契約上重要な役割を果たしますが、その機能は明確に異なります。
表明保証は過去・現在の事実を担保するものであり、誓約条項は将来の行動を拘束するものです。
英文契約を適切に理解しリスクを管理するためには、用語の訳語にとどまらず、それぞれの条項がどのような機能を持つのかを踏まえて検討することが重要です。
お問い合わせください
以下のようなご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。
・今、交渉中の契約書の表明保証条項について、アドバイスがほしい
・契約交渉の中で、自社の責任を軽くする提案方法を知りたい

