Force Majeure(不可抗力条項)とは?免責範囲と実務上の注意点

英文契約をレビューしていると、必ずといってよいほど登場するのが「Force Majeure(不可抗力条項)」です。平時には見過ごされがちなこの条項ですが、パンデミックや地政学的リスクが現実化した近年、その重要性があらためて認識されています。本コラムでは、Force Majeure条項の基本的な意味から、実務上の注意点までを丁寧に解説します。

Force Majeure(不可抗力条項)とは

英文契約における定義と位置づけ

Force Majeureは、当事者の支配を超えた事由により契約上の義務を履行できなくなった場合に、その責任を免除する条項です。英米法では、契約に明示的な規定がなければ不可抗力による免責は原則として認められないため、契約書に詳細な条項を設けることが実務上不可欠となります。

日本法の「不可抗力」との違い

日本法では、不可抗力は解釈上の概念として判例・学説で認められており、契約に明記がなくても一定の免責が認められる余地があります。一方、英米法圏では契約書に書かれていない免責は基本的に主張できません。この違いを理解しておくことが、英文契約レビューの出発点となります。

Force Majeure条項の法的効果

債務不履行責任からの免責

Force Majeure条項の最も基本的な効果は、不可抗力事由が発生した場合に、債務不履行に基づく損害賠償責任を免れることです。

契約解除権の発生

条項の定め方によっては、不可抗力が一定期間継続した場合に契約を解除できる権利が発生します。

履行期限の延長

多くの条項では、不可抗力の継続期間に応じて履行期限が自動的に延長される旨が規定されています。

対象事由の範囲|何が「不可抗力」に該当するか

典型的な列挙事由(自然災害・戦争・パンデミック等)

一般的に、地震・洪水などの自然災害、戦争・テロ、疫病(パンデミック)、政府による規制・命令などが列挙されます。

包括条項(catch-all clause)の解釈

列挙事由の末尾には「その他当事者の合理的な支配を超える事由」といった包括条項が置かれることがあります。ただし、英米法の裁判所はこれを限定的に解釈する傾向があるとい言われており、列挙事由と同種の事由に限定されることが多い点に注意が必要です。

該当性が争われやすい事由

経済状況の変動、為替変動、市場価格の高騰などは、一般的にForce Majeureには該当しないと解されます。また、単なる履行困難(hardship)と履行不能は区別されます。

実務上の重要な義務

通知義務(Notice Requirement)

ほとんどのForce Majeure条項は、不可抗力事由の発生を速やかに相手方に通知する義務を課しています。通知の期限や方法が具体的に定められていることも多く、これを遵守しなければ免責が認められないリスクがあります。

回避努力義務(Mitigation)

不可抗力事由が発生しても、その影響を軽減するための合理的な努力が求められるのが通常です。

義務違反がもたらすリスク

これらの義務に違反した場合、不可抗力の主張自体が否定され、債務不履行責任を負う可能性があります。

不可抗力状態が長期化した場合の扱い

契約終了条項(Termination Clause)との関係

不可抗力が一定期間(例:90日、180日)継続した場合、いずれかの当事者に契約解除権を付与する規定が設けられることがあります。解除権の発生条件や行使方法を事前に確認しておくことが重要です。

長期化に備えた条項設計のポイント

長期化した場合の費用負担、再開時の条件、解除後の清算方法なども検討事項となります。

金銭債務には原則適用されない

英米法では、金銭債務の支払いは不可抗力によっても免責されないのが原則です。支払資金の調達は常に可能であるという考え方に基づきます。

具体例|実務で問題になるケース

パンデミックと供給契約

パンデミック時には、工場閉鎖やロックダウンによる供給停止がForce Majeureに該当するか否かが世界中で争われました。契約締結時期や列挙事由の記載内容によって結論が分かれた事例も多くあります。

地政学的リスク(戦争・制裁)と取引停止

経済制裁により取引継続が違法となる場合、Force Majeureの適用可否に加え、制裁法上の義務との調整も問題となります。

サプライチェーン寸断と製造委託契約

サプライヤーの不可抗力が自社の履行不能を正当化するか否かは、条項の書き方次第で結論が変わります。

まとめ|不可抗力条項を正しく理解し、リスクに備える

Force Majeure条項は、非常時における契約責任の分配を定める重要な条項です。英米法では契約書の記載内容がすべてとなるため、条項の文言を正確に理解し、自社のリスクを適切に管理することが求められます。条項の解釈や交渉にご不安がある場合は、英文契約に精通した専門家へのご相談をお勧めいたします。

お問い合わせください

以下のようなご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。

・使える不可抗力条項を自社のひな形に入れたい。

・契約相手が不可抗力を主張するが、その主張を争いたい。

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